職人の技術は失われていく運命
仕事をしていると、昔は出来たのに今は出来ないといった事が多くあります。それは宝石職人も同じで高齢化が進んでいて跡取りもいないのです。
うちも仕事によっては別の宝石職人に頼む事があります。その時にこちらが指定した仕事を頼むと「どうやるんですか?」って聞かれる事があります。方法を教えたりしても今度はその為の道具がなかったりして仕事にならない場合も出てきました。
そんな時は別の方法で解決するんですが、ボクとしてはどうしてこんな事が起こるのかを考えていました。
よく思う事は昔と違って職人同士の交流がないって事。
昔は職人さん同士で会ったりして、仕事の話や普段の話などをしたりと色々な交流があったようです。「あのやり方教えてや。」「それは高いで(笑)」などなど聞いていても面白かったものです。
次は職人が作業員になってしまった
これ、意味が分からないかも知れませんが、宝石職人というのはあらゆる全ての仕事が出来ていました。オーダーメイドや通常の加工、新しい技術や道具の開発など、あらゆる知見を広めていました。他業種の技術を自分の技術にするとか研究開発が進んでいました。
しかし、今はイチから宝飾品を作る事がなく、石留め、サイズ直し、ロー付け、といった一般的な仕事しか出来ずそれに特化した仕事しか出来ない職人さんも増えてきました。それが作業員という意味です。
現在の職人さんの多くは作業員になってるんじゃないでしょうか。
仕事も道具も限られ技術も停滞します
こうなるとあまり多くは望めませんね。仕事が限られるし一日に出来るだけサイズ直しや石留め、ロー付けだけをするだけでも食べていく事は不可能じゃないですから。
そして、一番の問題
仕事が無い
実は宝石職人には国が認めた「一級技能士」という資格があります。今やその資格を持っている人でも仕事がありません。
ボクは大阪ですけどそういう人が結構います。この資格を持っていると基本的な仕事以外にもオーダーメイドも出来たりと職人としても活躍出来るのです。しかし・・・
仕事がないと腕も錆びつく・・・
こればっかりは自分一人だけではどうにも出来ませんし、宝石業界自体が不景気なので仕事が当然回ってきません。
悪循環ですけど、仕事がない、ある仕事は基本的な仕事ばかりとなると技術も上がらないし新しい技術も生まれません。
今は製品をある程度は機械的に作る事が可能になっているので、職人さんに多くを求めなくても製品が作れちゃうのです。
今までは新しい技術や製法を人の手でやっていたのに、そんな事をしなくても大丈夫な時代になってしまったのです。
そんな訳で昔の技術がどんどん忘れ去られてしまっているのです。代替の技術があればいいのですが本当にない場合もあるのです。
これが時代なのかと悲しくなるけど事実
生き残る事が出来る職人さんはそういった技術の向上に努めていて、なおかつ安定的にオーダーメイドの仕事を受ける事が出来る職人さんのみとなるんです。
残念ながらそういった宝石職人は一握りなのです。
時代の流れなのかも知れないですけど、寂しい気持ちもあります。本当に失われた技術というのは存在するのかと考えてしまいました(^^;)
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